2010年5月4日火曜日

斜拱渠(ねじりまんぽ)

 
「ねじりまんぽ」という構造をご存知でしょうか?
どうも「斜拱渠」という漢字を書くようですが、定かではありません。

どういうものかを簡単に表現してしまうと、レンガ積みのアーチ天井を持つ橋(トンネル)で、そのアーチが地面に対して水平に積まれているのではなく斜め(ねじれた状態)で積まれているアーチ構造です。

なぜ、そのような構造かというと、上を通る橋に対して下のトンネルが斜めに交差している場合に用いられる工法だそうです。


[こんな感じにアーチがねじれている]

どういう訳か西日本(関西)でよく使われた工法だそうで、現存する29カ所のうち26カ所が岐阜県よりも西に存在しているとの事です。

唯一メジャーなものとしては、京都蹴上のインクラインをくぐるトンネルが有名です。

レンガ造りのアーチという事もあり、大半が明治時代に作られたもので、おまけに鉄道の下をくぐる小道や水路用トンネルとして作られたものが多いため、とても美しく構造的に面白く、見た目にもインパクトの有る遺構であるにもかかわらず、2、3の特例を除いて世間からは無視されています。

そんな「ねじりまんぽ」の一つがうちのすぐ近所にあると知り、DP1sと三脚(?)をもち訪ねてみました。(といっても家から自転車で10分とかかりません。)

「馬場丁川橋梁」これが目的のねじりまんぽの名称。
元ネタのサイトでは、いまひとつ場所が定かでは無いようでしたが、写真の場所に見覚えがあったのでその場所に行ってみました。

JR京都線(東海道本線)の下をくぐる小さな水路トンネルであるため入口(出口)は当然、水路となっています。
おまけに一般人が見学する場所ではない(本来人が通る為のものでもない)ため入口はありていに言ってしまうとドブです。

[馬場丁川橋梁 北側入口 ①]


[馬場丁川橋梁 北側入口 ②]

入口上の数字「1962−7」はこの水路の管理番号なのか?ひょっとすると1962年7月にこの部分が作られた事を示しているのかもしれません。だとしたらこのコンクリート製の箱も僕よりも年上です。

目的のねじりまんぽは明治時代のものなので、一見この入口は関係無さそうに見えますが騙されてはいけません。明治時代の東海道本線は複線(上り下りそれぞれ1本)でしたが、現在のJR京都線は複々線(上り下りそれぞれ2本)+貨物支線(1本)なので線路の幅が2倍以上になっています。
それに合わせて水路トンネルも長くなっているはずなので、北側もしくは南側、場合に寄っては両方に延長部分があるはずでそれらはレンガ造りでは無い比較的最近のもののはずです。

という訳で、とにかくトンネルに入ってみます。

ありました! やっぱり!!

入口部分は無粋なコンクリートのハコでしたが、途中からレンガ造りの綺麗なアーチになっていました。

[コンクリートBOXとレンガアーチの接合部]


[間違いなくねじりまんぽ]


[ねじりアーチ(レンガ)と基台(石積み)との接合部]


[天井部分のねじれアーチ]

綺麗です、本当に美しい構造です。
四角いレンガで丸いアーチが造られているだけでも凄いのに、このトンネルは奥行き方向にも螺旋構造になっています。

基台は水平な石積みで壁面+天井部分のアーチだけが螺旋状にねじれて積まれています。

こんなに美しい遺構が人知れず線路の下に眠っているなんて全く考えた事もありませんでした。
トンネルの中はとても静かで(時々上を電車が通ってもさほど大きな音はしません)さながら異空間でした。

明治時代という事なので120年くらい前に造られたアーチという事になるはずですが、とてもそうは思えないくらい綺麗に残っています。
風雨、日照にさらされず気温変化の少ない地中でかつ、この水路は普段水が流れていないという好条件故にこの保存状態なのだと思います。

この馬場丁川橋梁はほとんど人に知られていない構造物ですしJRからすれば山ほど有る水路トンネルの一つにすぎません。

こういった先人の技をとどめる遺構が人知れずどんどん壊されて行くのがとても残念です。


[何故かアーチの途中に石の梁?]

この、梁状の構造物のため入口から覗くと、内部はアーチ状に見えず、通しで四角いトンネルのように見えます。


[南側 入口]

南側の入口は上の写真のような感じで、おまけに小さな畑の片隅です。こんなの絶対に解りません。

「馬場丁川橋梁」という名称自体「?」です。
正直、「橋梁」とは思えませんし、「馬場丁川」といわれてもこの普段水の無い水路が名前の有る川だとはとても思えません。

昔はそれなりの小川だったのか「馬場丁川」という地名があったのか謎ですが摩訶不思議な感じです。


[ストロボを使用せず長時間露光(15秒)で撮影]


「馬場丁川橋梁」の螺旋アーチの美しさに感動してしまい、この後、少し離れたもう一つのねじりまんぽ「円妙寺橋梁」まで足を伸ばしました。

自転車で1時間ほどの道のりですが、天気もよかったので散歩がてらいってしまいました。

「円妙寺橋梁」のレポートはまた次回。

写真は全てSIGMA DP1sで撮影しました。


最後に「馬場丁川橋梁」ですが、JRの立ち入り禁止区域になっていないとはいえ、本来、人が通り抜けるようになっている訳ではありません。

螺旋アーチの構造は綺麗に残っていますが、しょせんは長いドブ川トンネルの中ですので観光気分で侵入するべき場所では無いと思います。(当然、ゴミ、クモの巣、虫、あまり気持ちのよくない生き物などなど居ますし、内部はそれなりに異臭のする空間です。写真を良く見てい頂くとわかりますが、妙なもの一杯天井からぶら下がっています。この水路も農業用水路の一部だと思われるので、水門の開閉で突然、水が大量に流れて来る事もあると思われます。)


ねじりまんぽを紹介した素敵な動画がYoutubeにありました。




 

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