2021年10月17日日曜日

HF帯 自転車 運用(QRV)


HF帯の自転車による移動運用の様子を少し紹介します。

使用している機材は、

無線機:    YAESU FT-818ND

アンテナ:    GRA-7350T(台湾製)

アース:     平編導線アース線 8sq 100cm × 2本

電源:    MARBERO M82(ポータブル電源 88.8Wh)

計測器:    NanoVNA(アンテナ調整用)

自転車:    TREK Verve+

 こんな構成です。

自転車はクロスバイクタイプの電動アシスト自転車で、少々不格好ですがリアキャリアに大型のボックスを乗せていて、積載能力、走行性能、機動性共に割と余裕があります。 


アンテナは全長2m程有るのですが、自転車のリアキャリアに固定したモービルマウントに設置するので運用時の安定性に問題はありません。 (電動アシスト自転車は重たいですから。)

アース線は、モービルマウントとアンテナ基部のM型接栓の間に挟んで使用しています。普通に垂らしているだけですが、これで結構効果的に機能しています。

NanoVNAの計測で、7MHz~28MHzでSWR 1.2以下には落ちています。

 GRA-7350Tは各バンドに同調させる際、基部のコイルの長さを調整するのですが、この調整が非常にシビアで、数mm変ると100KHz単位で同調点が移動するので、調整にはNanoVNAなどのグラフ表示が可能なアナライザーが必須ではないかと思います。


荷台のボックスは容量的に余裕があるのでハンディー機なども一緒に入れています。配置的にアンテナに近接するため、影響が出にくいよう樹脂製のボックスを選びました。 

サスペンションの無い自転車の荷台は、走行時に結構な振動なのでラフに扱っても大丈夫(そうな)FT-818が安心です。IC-705での運用も考えたことがあるのですが、運搬時の安心できるケースなどを含めると結構な容積になるので、機能・性能的には劣るFT-818の方が手軽で良いと思っています。 


ポータブル電源は小型で軽量ですが通常のFT-818の運用では、5時間以上は持ちます。
受信だけであれば、計算上22時間以上持つ容量なので、FT-818ではこれで十分です。

このポータブル電源にはAC 100V、USB QC、Type-C PD、DCダイレクトの4種類の出力がありますが、僕は効率を重視してDCダイレクト (12-16.8V 10A)を使用しています。DCダイレクト出力は満充時に少々電圧が高くなるので、FT-818の負担を減らすため充電は8割くらいで使用しています。

運用場所に到着して、アンテナを展開しセッティングするのに10分程度、撤収は5分くらいで完了するので、場所を変えて運用する場合でも十分な機動性だと思います。 

By JQ3BDK

 

自転車でのHF移動運用

 

自転車でHF帯の移動運用をする際に重要になるのが機材の大きさと重さ(荷物の量)です。特にアンテナは性能を求めると大きさ重さ共に悩ましいところです。

無線機本体に関しては、ICOMのIC-705、YAESUのFT-818、XIEGUのX5105など方向性は違うものの小型でバッテリ駆動が可能でかつ高機能な製品が幾つか存在するので好みで選ぶことが出来ます。

電源も最近は小型で高性能なモバイルバッテリーやポータブル電源があるので余り困ることは無いと思います。

 しかし、HF帯のアンテナとなると選択肢はDIAMONDのRHM8B、RHM10MやCOMETのHFJ-350Mなどしか選択肢がありません。

しかしRHM8BはコネクタがBNCでアンテナ基台への取り付けと強度が微妙で、RHM10Mは サイズ的にも大きく価格も少々高価です。

COMETのHFJ-350Mは一番小型軽量で価格的にも入手しやすいのですが、DIAMONDの2製品と比べると使いこなし(SWRを下げる調整など)にテクニックが必要なように思います。 

そんな中、某ネットショッピングで見つけたのが台湾製のGRA-7350Tです。このアンテナは以前DIAMONDから発売されていたRHM7350のコピー品と思われますが、オリジナルのエレメント部が2分割式のFRP製だったのに対し、このアンテナは伸縮式のロッドアンテナになっており、長さ的にもオリジナルよりかなり長く(約2.2m)なっています。 

真ん中の一番短いものは3.5MHz用の追加コイルです。

7MHz~50MHzはロッドとコイル部だけで運用できます。
(仕舞い寸法は28cm)

各バンドでの同調はコイル部を伸縮させて行います。

このアンテナ、どういう訳か自転車のアンテナ基台に取り付けだだけ(アースを一切取っていない状態)で、7MHz~28MHzまではそこそSWRが落ちます、じっさいに電波が飛んでいるかは別として、NanoVNAでの計測、FT-818の簡易SWR計共にSWRは1.5以下には落ちます。 
50MHzはエレメント長を半分くらいに縮めても2.0くらいまでしか落ちないので、何らかのアースが必要だと思います。僕は平たい網線(1m)をアース替わりにアンテナ基台に挟んでいます。この状態で1.5くらいまでは落ちます。

各バンドでのコイルの調整はかなりシビアなので、NanoVNAなどのアンテナアナライザーが無いと大変だと思います。 

この平たい網線、ただぶら下げるだけでそこそこ効果あるようです。

僕のHF帯移動運用セット、小型のポータブル電源とFT-818。
この組み合わせで4時間以上は確実に運用出来ます。

By JQ3BDK

無線用アンテナの特性測定(Nano VNA)

 

 今回のネタは↑コレ(NanoVNA)です。

僕レベルの趣味の無線であれば、高価な測定器は知識も無く使いこなせませんし、必要性も無いかと思い、流行の中華製測定器(簡易ネットワークアナライザー)を入手しました。

説明書が無い(日本語のものが無いのではなく、全く付属しない)ので、ネットの情報と手探りで、使っているアンテナの状態を測定したり、移動運用時のアンテナの調整に利用したいと思っています。

少し使用した印象では、VSWR、インピーダンスの測定(範囲測定が可能でグラフが表示されます。) はそれなりに出来ているようです。 

1.5GHzまで、一応、測定できているみたいです。(1GHz以上での信頼性は微妙ですが。)

使い方(設定方法)を判った事から追記していきたいと思います 。

NA(ネットワーク アナライザー)は、交流(特に高周波域)の回路(ネットワーク)特性を計測するための測定器で、振幅特性のみを測定する測定器をSNA(スカラ ネットワーク アナライザー)、位相も同時に測定できる測定器をVNA(ベクタ ネットワーク アナライザー)と言うそうです。

取りあえず見たいのは、バンド内でのSWRの様子ですので、Nano VNAを使用して特定の周波数範囲のSWRを表示させる事にしました。

NanoVNAは電源投入と同時に即、計測(スイープ)が始まるというちょっと変わった仕様なので、初めて使うと「?」となりますが、各種設定は計測中でも自由に変更できるので、そのまま気にせずメニューを開いて、まずは計測範囲の下限周波数(START)と上限周波数(STOP)を設定します。この計測器は校正(キャリブレーション)を行う前に、計測範囲の設定をするのが作法のようです。

計測範囲の設定が完了したら、次にCH0(測定側)のSMA端子に計測に必要なケーブルや変換コネクタを接続します。校正は使用するケーブルや変換コネクタを接続した状態で(測定基準点を設定)行うのが良いとのことです。 校正を行なった時にCH0側に接続されているケーブルや変換コネクタの先端が測定基準点になります。

準備が出来たら校正(キャリブレーション)を行います、この作業は必須で、新たな設定で計測を行う場合には必ず必要になります。設定、校正の状態はNanoVNA内に5つまで保存することが出来ます。

校正の細かい手順は( https://www.jh4vaj.com/archives/13010 ) に詳しく紹介されています。

校正が完了したら、各種表示設定を行い設定を保存します。保存領域は0番~4番の5つがあり、電源投入時には0番が自動的にロードされるようです。

実際の測定結果画面
7.0MHz~7.2MHzを測定しています。 

7MHz+21MHz帯用のモービルホイップの計測結果ですが、短縮率の高いアンテナでSWR(黄色)のグラフがかなり急峻で同調範囲が狭いことが判ります。(SWR値自体はボトムで1.1前後なのでOK) 

また、共振周波数も7.028MHz付近で、電話で使用するには低過ぎることが見て取れます。このアンテナはCWでの使用に合わせて上手く調整されている様です。

電話で使用するには、もっと共振周波数を高く調整したいところですが、それにはエレメントの切断が必要になりそうです。

これはお借りしているアンテナの為、不可逆的な調整は出来ないので、上部エレメントの固定を緩めて出来るだけ短くした後の計測結果が↓です。

同調点が7.042MHzまで上がりました。

 出来ればSWRのピークを画面右側に来るように共振周波数を上げたいところですが、下手にエレメントを切断すると21MHz帯(現状は上手く調整できている)にも影響が出る可能性が大きいのでやめておきます。

画面内の水色のグラフはインピーダンスで、ほぼ50Ωで安定しています。緑色のチャートはスミスチャートです。 

SWRの測定値が低ければよく飛ぶという訳ではありませんが、無線機のファイナル段への負担が少ないのと、アンテナの共振周波数点は使用する周波数帯に合っていた方が 送受信ともに有利だと思いますので、手軽にアンテナ調整が出来るNanoVNAは使ってみる価値はあるように思います。

 

< 追 記 >

アンテナ所有者の快諾が得られたので、アンテナの上部エレメントを約1.5cmカットして調整しました。

調整後の計測結果です。 

7.0MHz~7.2MHz

21.15MHz~21.45MHz

良い感じに電話で使用する周波数帯にSWRのピークが来ました。

アンテナの状態を手軽に確認できるNano VNA、個人的にはお勧め出来る機材だと思います。 


今回計測&調整したアンテナ COMET HA415。
各エレメント先端の玉が大きめでレトロなデザインです。

By JQ3BDK 

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